July 31, 2005

永遠の旅行者

橘玲の永遠の旅行者 (上) (下)をようやく読んだ。

どうしても前作のマネーロンダリングと比べてしまうが、ストーリー的には前作よりは進化があるかな。キャラクタ的には前作と似たような感じだ。
自分的には、もう少しカット(場面)を省略して1冊にまとめた方が良かったと思う。単行本2冊にするような大作ではないだろう。
言いたいことがいろいろとあるような気持ちはわかるんだけど、もっとポイントを絞ったほうが好感が持てる。

前作を読んだ人は、途中で同じような展開を想像してしまうけど、その点では最後の方で裏切られる。前作のイメージがある人はこれに引っ掛ってしまうが、純粋にこの作品だけを読むと、よくある結末なのかもしれない。
橘玲の小説は、サスペンスとしては楡周平のテイストに似ているように思う。

次回作ではモナコやスイスを舞台にしたものを希望。
作者はまだその域までは資産を築けていないのかな。欧州のこの世界は金だけの問題では無い面もあり、敷居が高そうだが、ぜひチャレンジしてほしい。

昨年ぐらいからAICでやたらハワイ関係の本やサポート業務の話が出てきたと思ったら、ハワイを舞台にしたこの小説が刊行されたりなど、かなりベタな関係のようである。

結局のところ、相続税などの難しい問題を含む租税を回避するポイントは、小説のタイトルであるPTに行き着いてしまうという、やっぱり(ガッカリ)という結果になるようである。まあこれはある意味仕方ないかも。
小説の場合のように、相続人や被相続人の死亡時点など、タイミングに左右されるところもあり、絵に描いた餅的なところもあるが、頭の体操には良さそうな感じだ。

橘玲は、ステレオタイプの日本人や、日本という国家がとても嫌いなような印象を受ける。場面の描写や状況説明のちょっとしたところに軽蔑や批判の気持ちを含む記載がよく見受けられる。
そうはいっても、日本人というアイデンティティからは逃れられないという本人の葛藤みたいなものがあるのかもしれない。過去に何があったのでしょうか??

あと、橘玲の小説に欠かせないもの。主人公(金融知識が優れている魔法使い)、ヒロイン(精神を少し病んでいる)、金持ちの老人、仕事のできる協力者、強欲なオヤジ、ヤ○○、麻薬中毒者。
必ず登場人物に精神の病を持っている人が出てきて、かなりこの分野には詳しそうだが、本人が精神科医療関係なのか、もしくは病歴があるのかと思ってしまう。
いつもこのような話の展開だと、精神異常→犯罪のような図式を単純に連想されてしまう危険もあり、少し問題がありそうな気もする。
小説全体が重くなってしまうし、娯楽として単純に楽しむにはマイナスポイントだと思う。

読んでいると、自分にももう一人の自分が出てきそうで、怖くなってしまう。
人間は誰にでも少しはそういう面を持っているのかもしれないが、自分も壊れてしまいそうな錯覚を覚える恐怖がある。

でも結局どちらかといえば、買いだとは思うけど。
主人公はいつも英語バリバリのようだし、海外投資するにはもっと英語を勉強しなければと、と今さらながらまた思ってしまうこの頃である。

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